#63 フィルターの存在を認識し、バブルの外へ出る意志
Lookup
最近、人と話していて「流行っている」と感じる対象がバラバラであると感じる瞬間が増えました。互いに関心を持っているジャンルやコミュニティでの話題が全く視界に入っていなかった、という感覚です。今に始まったことではありませんが、より一層目に入らなくなった感じ。そして厄介なのは、こうしたズレに気づけたのは、たまたま人と直接話したからだということです。オンラインの情報だけで過ごしていたら、おそらく気づけなかった。
エコーチェンバーやフィルターバブルという言葉が広く知られるようになって久しいですが、状況はむしろ深刻さを増しているように思います。以前であれば、「自分の情報が偏っているかもしれない」という自覚がまだ持ちやすかった。テレビや新聞という共通の情報基盤があり、そこからのズレとして「偏り」を認識できたからです。ところがいま起きているのは、自分を取り巻く「膜」の存在そのものに気づけなくなっている、という事態。自分が何を知らないのかすら、わからない。
この「知らない」が厄介なのは、それが不信や疑念と結びつきやすいということ。たとえば、先日の衆院選で0議席から11議席へと躍進したチームみらいに対し、SNS上では「不正選挙ではないか」「裏に大きな組織がいるのでは」といった疑念が広がりました。
「自分の周囲では話題になっていなかった」
「YouTube再生数が少ない」
「街頭演説に人が集まっていなかった」
疑念の根拠として挙げられたものはさまざまですが、いずれも自分の観測範囲を世界の全体像と見なしている点で共通しています。「自分の情報環境が狭かったのかもしれない」と考えるのではなく、「何かおかしなことが起きているに違いない」と感じてしまう。この回路が、いまの情報環境のなかで強化されつつあるように見えます。
疑問を持つこと自体は健全な態度でしょう。問題は、その疑問が検証に向かわず、陰謀論的な物語へとショートカットしてしまうことにあります。「知らなかった」が「隠されていた」にすり替わり、「情報の非対称」が「意図的な操作」に読み替えられる。フィルターバブルのなかにいることに気づけないまま、泡の外側の出来事をすべて疑わしく感じてしまう構造が出来てしまっている。
では、この情報環境の悪化に対して、私たちには何ができるのでしょうか。個人としてできることもあるでしょう。意識的に異なる情報源に触れること、自分のタイムラインの外側を想像すること。でも、冒頭に書いたように、膜の存在に気づくこと自体が偶然に左右される以上、個人の意識だけに頼るのには限界があります。
だからこそ、メディアの役割に立ち返りたい。それは「横断的に情報を集めて、キュレーションして、届ける」ということに尽きるのではないでしょうか。これは特別に新しいことではなく、従来からの役割です。SNSのアルゴリズムが分断を助長する時代だからこそ、意志を持ってフィルターの外側を見せる試みの価値は、むしろ高まっていると感じます。
inquire / モリジュンヤ
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