#80 兆しとセンスメイキング
Lookup
いろんなテーマを横断的に追いかけながら、ひとつひとつの事象をつないでその間に意味を見出すこと。この水平的なアプローチは、メディアの大切な役割だと考えてきました。
社会の変化が激しくなっていると言われるようになって久しいですが、日々新しい動きや事象が生じています。この変化速度は衰えることはないどころか、加速を続けています。
このスピードで変化する事象のひとつひとつをつかむのではなく、俯瞰して見てみてなにかの「兆し」を掴み取り、つながりを示唆してみる。それが、「意味付与(センスメイキング)」しやすい土台づくりにつながるのではないかと考えています。
AIによって関心や集中が細切れになりやすい環境に突入しているからこそ、立ち返って思考を補助してくれるように、抽象レイヤーで自称のまとまりに「意味付与」を試みることが大切なのではというのが最近の仮説でもあります。
そこで、今回のニュースレターから、「Signals」というコーナーをはじめてみます。日々チェックしているニュースや動向などから、兆しを感じたテーマをピックアップし、紹介していきます。
ちょうど、今週は「自律する組織を問い直す」をテーマにイベントを開催することもあり、学びや組織、人の変化におけるシグナルを紹介してみようと思います。
inquire / モリジュンヤ
Signals
今週のテーマは、学びと変化。人や組織はどのように問いを持ち、学び、変わっていくのか。そんなことを考えさせられた3つのシグナルを紹介します。
「答え」よりも「問い」が価値になる時代
NPO法人ミラツクが立ち上げた共創メディア「RITE」が興味深い取り組みを始めています。読者が問いを投稿し、その問いを起点に記事が生まれ、さらに新たな問いにつながっていく仕組みです。すでに多くの読者が、独自の問いで記事を作成しています。
これまでのメディアは、編集部がテーマを決めて記事を届けることが一般的でした。しかし、AIの登場によってコンテンツ制作のコストが下がるなかで、価値の中心は「答え」ではなく「問い」に移りつつあるのかもしれません。
このメディアが目指しているのは、知識を届けること以上に、人々の探究を支える場をつくること。メディアは情報を届ける存在から、問いを育てる存在へ変わろうとしている兆しを感じました。
AI時代に求められるのは学習する組織
Microsoft CEOのSatya Nadellaが、AI時代における企業のあり方について興味深い投稿をしていました。
投稿のなかで語られていたのは、AIそのものの性能や導入方法ではなく、企業がどのように学び続ける仕組みを持つかということでした。変化の激しい環境のなかでは、一度つくった成功モデルを繰り返すだけでは十分ではありません。新しい情報を取り込み、試し、振り返り、改善していく。その学習の循環こそが重要になるという視点です。
AIによって知識へのアクセスはますます容易になります。しかし、そのとき価値を持つのは知識量そのものではなく、学び続ける文化や仕組みなのかもしれません。
これは企業だけでなく、個人やコミュニティにも当てはまる話なのではないでしょうか。変化の激しい時代だからこそ、「何を知っているか」よりも「どう学び続けるか」が問われているように思います。
「自己啓発」は、人の変化をどう支えてきたのか
アメリカ文学者である尾崎俊介さんの『アメリカは自己啓発本でできている』は、自己啓発というジャンルの歴史をたどりながら、その背後にあるアメリカ社会や思想の変遷を読み解く一冊です。
本書では、「努力すれば報われる」「自分を変えれば人生が変わる」といった考え方が、どのような時代背景のなかで生まれ、人々に受け入れられてきたのかが紹介されています。
興味深いのは、自己啓発を単なるハウツーや成功哲学としてではなく、人が変化しようとするときに拠り所としてきた知識や実践の歴史として捉えている点です。
コーチングやポジティブ心理学、リーダーシップ論など、私たちが現在触れている多くの考え方もまた、この流れの延長線上にあります。人はどのように変わるのか。変化を支えるものは何か。自己啓発というテーマを入り口に、人の成長や学びについて改めて考えさせられる一冊でした。
Information
こちらはイベント情報など、inquireからのお知らせを掲載するコーナーです。
Event
inquiring futures #3「いい会社、いいブランド、いい生活者の歩みと現在地。ライフスタンスのこれからを問う」
7月23日(木)に、inquiring futures #3「いい会社、いいブランド、いい生活者の歩みと現在地。ライフスタンスのこれからを問う」を池尻大橋のHOME/WORK VILLAGEにて開催します。
企業やブランドのビジョン・思想と、個人のライフスタンスの重なりを探究してきた のが、「PARaDE株式会社」が主催するイベント「Lifestance EXPO」です。 今回は、PARaDEを率いてきた中川淳さんと佐々木康裕さんをお迎えし、改めてこれからのライフスタンスを考えます。
いい会社とは誰にとっていい会社なのか。
いいブランドとは何を社会にひらく存在なのか。
いい生活者とはどのような人なのか。
お二人の対話を起点に、参加者一人ひとりが自分の問いを持ち寄り、ともに考える時間にしたいと思います。
日時:2026年7月23日(木)19:00〜21:30(開場 18:30)
会場:HOME WORK VILLAGE 209教室
参加費:無料
inquiring futures #2「自律する組織を問い直す」
6月25日(木)に、inquiring futures #2「自律する組織を問い直す」を池尻大橋のHOME/WORK VILLAGEにて開催します。
ティール組織、ソース原理といった組織のあり方が広まる一方で、形骸化や理念先行の弊害も見え始めました。AIも組織の一員になりつつある今、改めて「自律する組織」はどうあるべきなのでしょうか。
ゲストには、山田裕嗣さん(令三社)と中村真広さん(ウィルネクスト)をお迎えします。自律する組織とは、そもそもどのような営みなのか。誰のための、何のためのものなのか。どのように構築し、どのように運営していくものなのか。参加者とともに問い直します。
日時:2026年6月25日(木)19:00〜21:30(開場 18:30)
会場:HOME WORK VILLAGE 209教室
参加費:2000円
NPO法人soar主催「人の可能性を開くチームとリーダーシップ」
モリが理事として運営に参加しているNPO法人soarが開催する、全7回のオンライン講座「人の可能性を開くチームとリーダーシップ」に、インクワイアとして協賛しています。
この講座では、関わる人たちの可能性がひらかれ、葛藤や変化を含んだプロセスのなかから創造が生まれていくような、チームとリーダーシップのあり方を探求していきます。
現代の「結果」を重視する組織では、葛藤や迷いが後回しにされがちですが、感情や衝動を置き去りにすると、チームは少しずつ閉じてしまいます。だからこそ、揺らぎを含んだ「プロセス」に目を向け、人が本来の力を発揮し、一人ひとりが自分の意思や願いから行動していくチームづくりを一緒に考えられたらと思います。
6月29日(月)から講座がスタートしますので、ご関心のある方はぜひお申し込みください。
Pickup
編集部がピックアップしたイベント情報などをお知らせします。
AI時代の企業メディアとストーリーテリング
AI時代における企業のストーリーテリングを支援するスタートアップ・StoryHub株式会社が主催するイベント「AI時代の企業メディアとストーリーテリング」が、6月26日(金)に渋谷で開催されます。
今回のイベントは、StoryHubが東急・地域SNSアプリ「common(コモン)」と共に進めるプロジェクトをテーマに、これからの企業メディア × AIの未来について語り合う場。
AIを活用してまちに埋もれている物語の種をどう見つけ、編集し、届けるのか。地域情報流通の最前線で得た知見を、実際の記事配信やAIによる編集プロセスのデモとあわせて知ることができます。
日時: 2026年6月26日(金) 18:30開場 19:00開始
会場:SOIL(渋谷)
(https://shibuya-soil.com/)定員:約50名(一部招待制)
参加費:無料
「防衛テック」の倫理──「国家とイノベーションの関係性」を再定義する【Academic Insights #26】
研究者および各領域のエキスパートの皆様とともに議論し、より多様な視点から「いま私たちが生きている時代」あるいは「社会がこれから直面する課題」について深めるシリーズ「Academic Insights」。
今回のテーマは、「防衛テック」の倫理。日本における防衛産業政策の変遷を踏まえて、防衛テック企業や投資家に求められる「倫理」とはどのようなものなのか、4名のゲストとともに議論します。
日時:2026年6月29日(月) 20:00〜22:00
会場:Unknown Unknown
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1丁目19−1 2F
https://maps.app.goo.gl/oT2Xiz6vxj5mikWH7定員:30名
参加費:3500円
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